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*CATとはクリエイティブ・アーツ・
セラピーの略称です。

2010 年 3 月 23 日

ドラマセラピスト ロバート・ランディ博士初来日!

 大都市においては、クリエイティブ・アーツ・セラピーがメンタルヘルス分野で認知されつつある米国。教育機関も充実し、学ぶ機会、職業としての専門性が確立されてきています。ドラマセラピーの養成大学院は現在北米に3校ありますが、アートセラピーやミュージックセラピーといったほかのモダリティ(表現媒体)に比べると、まだまだ小さなコミュニティーであることは否めません。

 3つの養成大学院の一つが、ニューヨーク大学大学院ドラマセラピー学科です。先日、その学科長であり、米国におけるドラマセラピーのパイオニアでもあるロバート・ランディ博士が初来日し、京都では立命館大学大学院応用人間科学研究科主催のもと講演会とワークショップ、東京では日本ドラマセラピー研究所主催で2日間のワークショップが開催されました。

 心理学や演劇学から影響を受けたドラマセラピーには様々な手法やアプローチがありますが、その中でもランディ博士は、各演劇理論やユング心理学、社会理論などの影響を受けながら発展させた「ロール(役割)理論」を提唱しています。

「ロール理論」とは、次の3つの考え方に寄り立つものです。

・人は生まれながらロール(役割)を担い、それを演じていくということ

・人格は、たくさんのロールの相互的な体系からなるものであるということ

・人はバランスを求める生き物であり、あいまいな状態を受け入れられる許容量があるということ

 これらの考え方を背景に、さまざまな役割のバランスをみつけることをロール理論はめざします。バランスを見つけていくプロセスには、主人公が目的に向かって旅をするというストーリーが、大切な役割を果たします。

 東京でのワークショップは、「役割チェックリスト」から「Who am I(私はこうである)」「Who I want to be(私はこうなりたい)」「Who is blocking me(これが私を妨害している)」「Who can help me(これが私を助けてくれる)」の4つを選ぶことから始まりました。選んだ4つの役割を絵に描きイメージをふくらませると、自然にそれらの役割が登場するストーリーが生まれてきました。ストーリーを演じていく段階では、主人公の心情がさまざまな角度からドラマ的に掘り下げられ、行く手を阻む役割が主人公の旅をより難しいものにしていきました。解決を求めるというよりは、主人公が何を欲し、それを何がブロックし、何が助けになるのかを探るためのドラマが展開されたように思います。こういったプロセスを踏んでいく中で浮かび上がってきたテーマはどこか自分にもつながるもので、次の、また次のストーリーへとつながっていきました。二日間を振り返ると、普遍的ななにかへと続く螺旋の階段を、グループ全員でゆっくりと昇っていくイメージが静かに浮かんできます。

 モダリティにより前後はありますが、クリエイティブ・アーツ・セラピーが分野として確立したのは1960年代から70年代にかけてです。第一世代として草創期からこの分野に貢献してきたセラピスト・ランディ博士の「あり方」から学べることは、技術や技法を学ぶこと以上のメッセージのように思われました。今後も、このような機会を皆さんに発信していきたいと思っています。

※ロバート・ランディ博士のロール理論に興味をもたれた方は、「Essays in drama therapy: the double life(Jessica Kingsley出版)」をお勧めします。

※翻訳本は出版されていません。