6月25日、ミニシンポジウム「家族を支えるクリエイティブ・アーツ~困難を抱えた子どもと家族によりそうために~」が開催されました。
午前は、鈴木琴栄さんより、コロンビア大学での「CARING(Chiildren at Risk: Intervention for a New Generation)」の取り組みの紹介と、CARINGにおいて親が学ぶスキルをロールプレイを通して学ぶ時間を持ちました。CARINGは、愛着形成の重要性に着目した早期介入による親子のサポートプログラムで、より安定的な愛着形成を促進するための心理教育的なモデルであるということでした。子どもの創造・表現遊びを受け止めながら親子の絆形成や共有体験を育んでいくのかという視点は、CATの理念そのもので、大切な基本を再確認できる時間でした。
午後は、ふたつの取り組みの紹介がありました。
天野敬子さんからは、豊島区における不登校支援や子ども食堂での取り組みなどについて紹介がありました。日本における貧困や不登校の現状の紹介があり、子どもや家族が暮らす、地域に根差した取り組みの重要性や必要性を強く感じるレクチャーでした。五感を使って遊ぶプレイパークの活動や、あそべるようになることが回復や変化につながるということでアートの力を活用しているという不登校支援の活動はもちろんのこと、子ども食堂を企画し運営していくこと自体が創造的な活動であり、それにかかわる大人たちがその中で生き生きとしていくというお話はとくに印象的で、支援するものされるものという境目のないこうした取り組みが、個々のサポートであるとともに、地域の癒しにもつながっていくようにも感じました。
井上里美さんからは、養護施設での心理/アートセラピー臨床の事例紹介がありました。個別アートセラピーとグループアートセラピーの事例紹介ともに、アートの中で思いを表現していく子どもの様子がよくわかり、とても貴重な学びの機会になりました。素材選択の大切さや枠組み作りの重要性、子どもへの説明の方法なども具体的にご紹介くださり、臨床において留意すべきことの学びにもなりました。また、心理士一人の職場で、他の職員の理解を仰ぎ、協力を求めていく際の課題や実際に工夫していることの紹介もあり、参考になることが満載のレクチャーでした。
最後の全体会では、一日を振り返るときに心に浮かぶ言葉を書き留め、紹介しあい、交換していくというアクティビティや、手元にある言葉や交換のプロセスから、一つのシンボルをコースターに描くというワーク、小グループで各コースターを家族の一員としてイメージしながら様々に配置したり、体を使って表現してみるといったことをしました。短い時間でしたが、言葉やイメージ、体などのクリエイティブアーツの媒体を取り入れながら、改めて「家族」という今回のテーマに立ちもどり、考察する時間が持てたように思います。